教えて漢方
漢方の古典紹介シリーズ
(1)神農本経
漢方は東洋医学です。それは現代医学とは全く違った背景で形作られました。
一通りの基礎は1800年前に完成されているのです。常識的に考えるとそんな2000年も昔の医学が
現代で通用する訳ないと思うでしょう。日本はまだ弥生時代でした。しかし中国では三国志でもわかると
おりすごい人たちが居たようです。現代ではいろんな便利な物が出てきました。しかし、一方治らない病
気も出てきました。昔の人はどうだったのでしょう。自然と一体でした。最近環境問題が言われています
が、人間は自然の一部です。人間は自然の一部だと理解しそれに随って生きていた人たちが1800年
前の人たち。自然を理解し人間をも今よりも理解していたと思います。心と体は一体だと既に思われて
いました。
現在でも使われて効果を発揮する葛根湯や小柴胡湯はこの時代に作られました。現代ではいろんな便
利な物が増えたけれど、自然を無視して人間のエゴを追求するのは良くないのです。
ところで、この神農本経には365種類の生薬が出てきます。それは大きく上薬、中薬、下薬の3種類に
分類してあり、上薬120種類は主に養生に使われ、中薬120種類は健康保持に使われ、下薬125種
類は激しい病気の治療に使われます。もちろん全品病気の治療に使われますが、上薬ほど安全で下薬
ほど作用が激しくなっています。上薬には食品にも使われる。ニッケ、朝鮮人参、甘草、霊芝、キクの花
、蜂蜜、ヤマイモ、クコ、ナツメ、海のカキ等があり、中薬にはショウガ、クズの根、百合の根、イカリ草、
カラタチの実、桃の種、アンズの種、アサリ、ハマグリ、イカの骨、スッポン、ウメの実が、下薬には大黄、
半夏、附子や薬用の虫など作用の強い薬物があります。
この神農本経で大切なことはそれぞれに気味と言われることが書いてあり、作用を示します。味に五種
類有り、辛味、苦み、甘味、酸味、塩辛味です。
酸味は肝臓に入ります。ウメ、五味子など。
苦みは心臓に利きます。甘味は脾臓に、辛味は肺に、塩辛味は腎臓に入り、それぞれ違った効果を現
します。神農という角が生えた仙人が百の草をなめて一つの薬を見つけたとかという伝説が残っています。
漢方の歴史
約2000年前の書物に素問という医学書があります。世界最古の医学書といわれていますが、それに
は人体の生理、自然現象、養生法、生き方などが書いてあります。それを更に詳しく書いた霊枢、生薬の
解説書の神農本経、素問・霊枢の難解な部分を解説した難経。これらの書物はいろんな人が書いてそれ
を誰かが編集しています。そして上記の書物を参考にして薬物(漢方薬)の治療法を書いた傷寒論と金匱
要略があります。此の書物も色々の地域やいろんな人が経験してよく効いたことをかき集めて編集されて
います。つまり、漢方とは今までのいろんな先輩方の経験を集めた物です。先輩の治療に於ける失敗や
成功を集め、その良い部分だけを編集されています。うまくいかずに薬のために亡くなられた方も数え切
れないくらいおられるはずです。また救われた方はそれ以上に居たと思います。
漢方は積み重ねです。新しいことはあまりありません。しかしこれらを使うことにより少しずつ、さらなる
経験が積み重なります。それを次の世代が使います。漢方(伝統医学)とはそういうものです。
ただそこには一定のルールがあります。漢方のルールです。
そのルールは陰・陽、虚・実、寒・熱、気・血・水(津液)という言葉を使います。
現代ではこの言葉の正しい意味を理解せずに漢方薬が使われています。それで間違いが起きやすいの
です。そのルールは素問、霊枢という本を基準にします。
(2)傷寒論
風邪は万病のもとといいます。昔は風邪を引いてから重症になり亡くなられた方もたくさんおられたようです。
そこで傷寒論という本を作り後のために役立つようにしました。傷寒論は約1800年前の書物ですが、現在
でも漢方を学ぶ人には必読の書といわれ、葛根湯、小柴胡湯など現在でもこの書物よりたくさんの処方が使
われています。その本の序文にはこんな事が書かれています。
私は常日頃より自分の思っていることを述べてみると、扁鵲という医者がその国の元気そうな王様の顔色を
見ただけで病気になるのを予告したり、死にそうな人を助かると言って漢方薬を飲ませて生き返らせたりする
のを見て、なんと素晴らしいことかと思う。
納得いかないのは、今の世の人達は昔のように医療においてはお金のことなど考えず、一身に伝統医学を
学び、病人の気持ちを感じて辛さを理解して治療を行い、お金が無い人だろうが有ろうが、心の治療も含めて
救い、人の寿命を全うさせようとはしないで、華やかさを求め、権力にしがみつき、名誉やお金を求め、外見の
見栄えをりっぱにすることを大事にして本心を磨くことをしない。
しっかりと地に足をつけなければ何をやっても浮き足立ってやり遂げられませんよ。
ところが、急に病気になって重症になると、驚いて震え上がり、人の命をわからぬ人にその余命をたずね、
或いは怪しい占い師にすがり、何とかしてくれと頼む。
人は百年の尊い寿命を備えているのに、藪医者に任せてやりたい放題にさせる。
なんという...悲しい。
命の火が消え、死体になり、地中の深い、暗いところに埋められてどうしようもなく嘆いてしまう。無知とは...
痛ましいことだ。
それはまるで暗い中で、或いは目隠しをされてどうして良いかわからず、うろうろしている。虚栄で生きて命を
惜しまない。
そして周囲に向かっては人を愛し人の本質を知ろうとしない。
内においては自分を愛し、自分の本質、自分の役目を知ろうとはしない。
災害に遭い、禍に遭い、危ないところをうろうろする。暗く、ぼんやりして浮かれ魂のようだ。哀しいことだ。
世間の有名な人でもうわべの華やかさを競い、足元を固めず、自分を忘れて形や物にしがみつく。深い谷の
薄い冰の上に立っているようだ。
我が一族は以前は200人以上も居た。それから10年も経っていないのにそのうち140人も死んでしまった。
そして急性熱病から死んだ人はそのうちの七割だ。過ぎ去った昔に死んだ人のことを思い、天寿を全うできず
に死んだ若い人のことを助けられなかったことに心を痛めた。
だから今まである先輩方が経験を積まれた伝統医療からいろいろと集め、素問、霊枢、難経、神農本経、
運気論から選び、その本をもとにして傷寒雑病論という本を作りました。この本ですべての病気が直せると
は思わないが、この本を基本にして病気を診察すれば、病気の本当の原理がわかり、素晴らしい治療が
出来ることでしょう。
