『何がジェーンに起ったか?』
(原題:What Ever Happened to BabyJane?)

1962アメリカ・監督:ロバート・アルトリッチ
出演:ベティ・デイビス、ジョーン・クロフォード

 これは二人の年老いた姉妹の物語です。
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(ワーナーブラザーズ「何がジェーンに起ったか?」より)

 最初この映画を観た時、すぐに楳図かずおの「おろち」の中の1エピソード「」を思い出しました。同作品の中では、「光る眼」をモチーフにしたと思われる「ふるさと」という話もあるのですが、これによって楳図かずおが絵柄も含めて(驚くほど元ネタの雰囲気を再現してます)、映画(主に白黒)の影響を強く受けていることが改めてわかったと同時に、この映画の結末もなんとなくわかったような気がしました。

 それでも最後まで目が離せず、ラストシーンも頭に焼き付くほどの強烈なインパクトをもってしまうところがすごい作品です。

ヂェーン ブランチ
(人気絶頂の妹とそれを妬む姉の図)

 話としては、体の不自由な姉が精神に以上をきたした妹に家に閉じ込められてひどい仕打ちを受けるというもので、この設定をみてこれまたすぐにピンときたのが、スティーブン・キング原作の映画「ミザリー」です。

ミザリー風

 サイコ女である妹の魔の手から逃れたくても逃れられないどころか彼女なしでは生きていけないという姉の絶望的な境遇、そしてスキをみてはなんとか外部とのコンタクトをとろうと、車イスから降りて這いつくばりながら電話に向かおうとしたりタイプライターを使ってSOSを発信しようとする姉の必死な姿、そして姉をひどく虐待したかと思えば突然優しくなってみたりする妹の狂いぶりなどは、まさに「ミザリー」の主人公と女ストーカーそのままです。

 この作品で鬼気迫る演技をした妹役のベティ・デイビスが「ミザリー」のキャシー・ベイツのようにオスカーを取れなかったのは、この作品が世に出るのが早すぎた証かもしれません。

鬼婆

 というのも、とにかくこの妹の異常ぶりはすさまじいもので、姉の可愛がっていた小鳥や捕まえたネズミを食事に出したり、幼き日を思い出して突如子供のように踊って歌い出したり、自分がまだ一流スターだと思い込んであちこちで自慢してみたり色気づいてみたり、大根役者といわれた女優であるはずが酒を注文したり医者や取引先をだます時に姉の声色や筆跡までソックリに真似てみたりと、戦闘力という点を除けばそれはもう見事なまでにキャシー・ベイツ以上のサイコぶりを発揮しています。

 こんなイカレた女と密室で二人きりになるのが足の不自由な姉なので、その緊張感はたまりません。また、「ミザリー」同様(「ミザリー」の方が後ですが)、逃げるチャンス、助かるチャンスがあと一歩のところでことごとく潰されてしまうというのもよりもどかしさと緊張感を助長していて、観ていて目が離せません。

狂気

 また、年代を追って語られるという構成と、物語のキーとなる歌「パパに手紙を」を効果的にアレンジしたBGM、そして妹の口から語られる言葉が伏線となるラストシーンの見事さは、全く白黒映画であるという古さを感じさせず、非常に緻密でスキのない高い完成度を持った作品となっています。

 本当に恐いのは人間、しかも女の嫉妬や執念ほど恐ろしいものはないとよくいいますが、この作品はまさにそれを表す典型的な作品です。
それが証拠に、サイコじいさんが主役の映画ってあんまり聞いたことがありません。


ストーリー

 1917年。
子供スター「ベビー」ジェーン・ハドソンは、自身の名がついた人形が売り出されるほどの絶大な人気を博し、演奏家の父と共に日々舞台で喝采を浴びていた。

 「一家の家計を支えているのは私なのよ!」とわがまま放題にふるまうジェーンを舞台袖から嫉妬の目で見つめる姉のブランチに、母は「今にお前もきっと注目を集めるようになるわ。その時はジェーンとパパにやさしくしてあげて。いいわね。忘れないで」となだめる。

 「いいわ。忘れないわ。死んでもわすれない
ブランチは決意を秘めた目で答えた。

 1935年。
母の言葉通り、ブランチは今や大女優となっていた。
全てを手に入れた彼女は母のいいつけ通り、落ちぶれてアル中となったジェーンにその発言力で端役を与えていた。

 そしてある夜、彼女のパーティで事件は起こった。

 それから数十年後、ブランチは車イスでの不自由な生活を強いられていた。
いまや再び彼女を養う立場となったジェーンの異常性に頭を悩ませたメイドは、ブランチに家を売却し、ジェーンを施設に入れることを勧める。

 しかしそれらはすべてジェーンの知るところだった、、、


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