
日本小児内分泌学会性分化委員会
性分化障害症の管理に関する合意見解
Consensus statement on rnanagement ofintersex disorders
‐LWPES/ESPE Consensus Group
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2006年,性分化障害症について国際会議が開かれ,統一した国際命名法や,患者の取り扱いについてのコンセンサスが発表されました。小児内分泌学会の性分化委員会において,このコンセンサス内容の翻訳と日本における簡単な管理指針や留意事項をまとめました。
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日本小児内分泌学会性分化委員会
抄訳:緒方 勤,堀川 玲子,長谷川奉延,位田忍,向井 徳男,安達 昌功,有阪 治,
藤枝 憲二(理事長)
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インターセックスを呈する患児の誕生では,家族と多数の専門家の連携による長期管理戦略の確立が急務となる。
生殖器の変異は,出生4,500例に1例の頻度で発生すると推定される。診断,外科手技,社会心理学的問題の理解,および患者擁護の認識と受容には大きな進展がみられる。
Lawson Wilkins小児内分泌学会(LWPES)および欧州小児内分泌学会(ESPE)は,いまこそ,インターセックス疾患の管理について広範な視点から考察し,長期アウトカムデータのレビューを実施し,今後の研究への提言をまとめる時期であると考えた。
その方法として,当該分野の国際的専門家50名から選出した会員によるいくつかのワーキンググループを設立した。このグループは,文献的エビデンスのレビューから浮かび上がる一連の明確な疑間に前以って書面で回答した。
その後,参加者が集合した機会において,合意資料(文書)の枠組みが承認された。
本稿はその最終版である.
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命名と定義
性分化障害症の分子遺伝学的原因の同定が進歩すると共に,倫理的問題や患者擁護への懸念に対する認識が高まり,命名法の再検討が必要になっている
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インターセックス(間性),仮性半陰陽,半陰陽(雌雄同体),性転換などの用語は特に論議を呼んでいる.これらの用語は,患者にとっては蔑視的な意味が潜むものと感じられ',専門家や親にとっては紛らわしいものである。
「性分化異常症」(Disorders of Sex Development:DSD)という用語は,染色体,性腺, または解剖学的性が非定型である先天的状態と定義されたものとして提案されている専門用語の変更案は,に要約される通りである.性分化の分子遺伝学的視点の進歩を統合する新たな用語集が必要である.DSD患者それぞれのアウトカムデータにはtll約があるため,定義と診断票を適用する際は正確を期すことが必須であるう°
.また,患者の懸念に細やかに配慮した専門用語を使用することが適切である
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表1
| 旧命名法 |
新命名法 |
| Intersex |
Disorders of sex development(DSD) |
Ⅳlale pseudohermaphrodite
Undervirilization of an XY male
Undermasculinazation of an XY male |
46,XY DSD |
Female pseudohermaphrodite
Overvirilization of an XX female
ⅣIasculinazation of an XX female |
46,XX DSD |
| True hermaphrodite |
Ovotesticular DSD |
| XX male or XX sex reversal |
46,XX testidular DSD |
| XY sex reversal |
46,XY complete gonadal dysgenesis |
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表2 性分化疾患症分類の1例
性分化変異症分類の1例
Sex chrOmOsome DSD) |
46,XY性分化変異症
(46,XY DSD) |
46,XX性分化変異症
(46,XX DSD) |
)45,X(Turner症候群など)
47,XXY(KIneferer症候群
など)
45,X/46,XY(混合性性腺異形
成,卵精巣性(ovotesicular)
DSD)
46,XX/46,XY(キメラ,卵精
巣性(ovotesucular)DSD) |
(A)
性腺(精巣)分化変異
1 完全型性腺異形成(Swyer症候群)
2.部分型性腺異形成
3 精巣退縮症候群
卵精巣性(ovotesticular)DSD
(B)
アンドログン合成障害・作用異StAR変異症など)
2アンドロゲン不応症(CAIS,
PAIS)
3 LH受容体異常(Leydig細胞無形
成,低形成)
4 AMHおよびAMH受容体異常
(Mller管遺残症)
(C)
その他(重症尿道下裂,総排泄腔外反
など) |
(A)
性87R(卵巣)分化異常
1.卵精巣性(ovotesucular)DSD
2 精巣発生異常 Tesicular DSD
(SRY+,dupSOX9など)
3.性腺異形成症
(B)
アンドロゲン過剰
1.胎児性(21水酸化酵素欠損症,
1lβ水酸化酵素欠損症など)
2.胎児胎盤性アンドロゲン過剰
(アロマターゼ欠損症,POR異
常症)
3 母体性(Luteoma,外因性など)
その他(総排泄腔外反,IF_閉鎖
MURCSなど) |
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理想的な命名法は,新たな情報を取り込めるだけの柔軟性を持ち,なおかつ一貫した枠組みを維持できる強固なものであろう.用語は記述的で同時に遺伝学的病因を反映し, また,多様な表現型スペクトラムに対応しうるものでなければならない.臨床医と科学者はその使用を尊重し,患者と家族に理解できるものでなければならない。
命名法案がDSD分類にどのように適用できるかという例を表2に示す。
精神的性発達は,伝統的に3つの成分に概念化されている.性同一性(gender identity)はと,ある人の男性または女性としての自己表現である(人によってはどちらか一方のみに識別できないことを付記しておく).性的役割(gender
rOle,性別の典型的行動)とは,一般集団における玩具の好みや身体的攻撃性などに見られる性的二型性を示す心理学的特徴である。
性的指向(sexual onentation)とは,性愛的関心の方向(異性愛,両性愛,同性愛)であり,行動,空想,関心を含む.精神的性発達は,アンドロゲン曝露,性染色体上の遺伝子,脳構造,ならびに社会環境や家族動態等の多数の因子に影響される
性別への不満とは,割り振られた社会的性(法律上の性,養育上の性)への不幸感を意味する.性別への不満の原因は, よく理解されていない.性別への不満は一般集団よりDSD者に多くみられるが,核型,出生前アンドロゲン曝露,生殖器男性化の程度, または割り当てられた社会的性男から予測することは困難である。
.出生前アンドログン曝露は,他の精神的性発達の側面と明らかに関連している°9.先天性副腎過形成女児の小児期遊び行動は量依存性であり, より重度の遺伝子変異と著明な外性器男性化を有する女児は,男児の玩具で遊ぶことが多い。.
出生前アンドロゲン曝露も,母性的関心や性的指向等の他の心理学的特徴と関連する。性特異的行動,性的指向,および性同一性が乖離可能であることは強調されるべきである.したがって,DSD各人における同性愛指向(養育上の性に対して)や強い異性的関心(crosss‐ex
intereSt),は誤った社会的性決定の指標とはならない.DSD者における精神的性発達の多様性を理解するためには,脳の性分化および行動にアンドログンが著明であるが複雑な作用を及ぼすことを示すヒト以外の種の研究を参照する必要がある。
アウトカムは,アンドログン曝露の時期,量,種類,受容体の利用可能性,および社会環境による修飾に影響される。
.げっ歯類の研究データは,性染色体上の遺伝子も脳構造と行動に直接影響する可能性を示唆する。.しかし,完全型アンドロゲン不応症(CAIS)患者の研究からは,データは限られているものの,Y染色体上の遺伝子が行動に果たす役割は支持されない.脳構造の性差は,様々な種で知られており,一部の種では思春期の始まりと時期を同じくすることからホルモン反応性の関与が推測される。.辺縁系と視床下部は,両者とも生殖に関与し,特定の核において性差を示すが,
これらの差がいつ現れるかは明白でない 性差の解釈は,細胞死とシナプス形成が正常な成熟に及ぼす作用,および経験が脳に及ぼす作用により複雑になる
現時点において,脳の構造は社会的性決定にとって有用でない。
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DSDの検討と管理 ~ケアの一般概念~
DSD者の最適な臨床管理は下記を含むべきである。
社会的性の決定(gender asdgnment),は専門家による新生児の
評価前に行ってはならない
評価と長期管理は,熟練した集学的チームが存在するセンターで行うこと。
すべての人が社会的性別の割り当てを受けられること。
患者と家族にたいするオープンなコミュニケーションが必須で,彼らの意思決定への参加が推奨される。患者と家族の懸念が尊重され,極秘に扱われることDSD患児を持つ両親との最初の接触は,このような場の第一印象がしばしば持続するため,重要である.強調すべき重点は,DSD小児が社会の一員として十分適応し,機能する力を有しているということである。
プライバシーは尊重されなければならないが,DSDは恥ずべきことではない。
両親にたいしては,初めは最良の方策が明らかでない場合もあるが,ヘルスケアチームがその状況において考えられる最良の決定に至るように家族と連携することを説明する.
ヘルスケアチームは,初期の段階で家族のメンバーや友人と共有すべき情報が何かという点について,両親と話し合う必要がある。両親には性の分化。発達に関する情報を伝達する必要があり,ウェブによる情報も,内容や情報の焦点がバランスのとれた健全なものであれば有用であろう知.の既情報を提供すると共に,十分な時間と機会を尽くして継続的な話し合いがなされなければならない.
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DSDの検討と管理 ~チーム医療~
DSD小児の最適なケアには,通常三次医療センターにみられる経験豊富な集学的チーム医療が必要である.理想的には,チーム内に内分泌学,タト科または泌尿器科,心理学・精神医学,婦人科,遺伝学,新生児学,および可能あればソーシャルワーク,看護学,医療倫理学を専門分野とする小児科医がいることが望ましい
.中核になる構成は,DSDの種類,人的資源,発達の前後関係,および地域によって異なろう。 家族のプライマリケア医との持続的なコミュニケーションも必須である20.そのようなチームは,罹患新生児とその家族の適切な初期管理において,他のヘルスケアスタッフを教育する責務を負う.新しいDSD患者に対して,チームは,診断,社会的性の割り当て,および治療選択肢に関し,いかなる
勧告も行う前に,臨床管理計画を作成する必要がある。理想的には,家族との話し合いは適切なコミュニケーションスキルを有する専門家の指導の下に行われるとよい.移行期におけるケアは,小児と成人の両者の診療に経験豊富な専門家を含めて計画すべきである.サポートグループは,DSD患者と家族にケアを提供する際に重要な役割を呆たす
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DSDの検討と管理 ~ 臨床的評価~
家族歴および出生前既往歴,奇形徴候を網羅した理学的所見,および正常値と比較した生殖器構造の評価が記録されねばならない.DSDを示唆する基準には以下のものが含まれる。
明瞭な外陰部。生殖器のambiguity(例,排泄腔外反症)
女性型タト陰部・生殖器で,陰核肥大,後部陰唇癒合, または鼠頸部/陰唇塊を伴うもの
男性型外陰部・生殖器で,両側停留精巣,小陰茎,孤立性の会陰部開口型尿道下裂
または停留精巣を合併する軽度の尿道下裂を伴うもの
CAIS等のDSD家族歴・外陰部。
生殖器外観と出生前核型の不一致DSDの原因の多くは新生児期に認識される.小児期後期および若年成人期における症状としては,それまで認識されていなかった外陰部・生殖器のambiguity,女児における鼠頸ヘルニア,遅発または不完全な思春期,女児の男性化,原発性無月経,男児における乳房発達,男児における肉眼的でときに周期的な血尿,が挙げられる。 |
DSDの検討と管理 ~診断的評価~
ヒトの性分化の遺伝学的基盤の理解は大きく進歩したがり,DSD症例において特異的な遺伝子診断が下されているのは約20%に過ぎない.男性化を伴う46,XX乳児の大半はCAHを有する.対照的に,46,XYを有するDSD児で確定診断に至るのは50%に過ぎない.
診断アルゴリズムは存在するものの,症状と診断の幅を考えれば,単一の診断的評価プロトコールを推奨することはできない.超音波画像撮影等の一部検査は,オペレータに依存する.ホルモン測定は,特異的なアッセイの特徴や妊娠週数および暦年齢の正常値と関連付けて解釈する必要がある一部症例では連続的な測定が求められる。
新生児の第一選択検査には,XおよびY特異的プロープを用いた核型分析(出生前核型が判明している場合でも),画像撮影(腹腔骨盤超音波),17‐ヒドロキシプログステロン,テストステロン,
ゴナドトロピン,抗ミュラー管ホルモン(本邦では一般的ではない),血清電解質の測定,尿検査,が挙げられる.これらの検査結果は通常48時間以内に半明し(本邦では外注の場合,
より時間を要する),実用的診断を下すには十分である.意思決定アルゴリズムは,より詳しい検査のガイドとして利用できる。
より詳しい検査には,精巣と副腎のステロイド生合成を評価するためのhCGおよびACTH刺激検査,ガスクロマトグラフ質量分析による尿ステロイド解析,画像撮影,性腺組織の生検が含まれる.遺伝子解析の一部は臨床サービス検査機関で行われる.しかし,現時点において遺伝子診断は,費用,アクセスのしやすさ,および品質管理の制約を受ける研究検査機関は,機能解析を含む遺伝学的検査を提供するが,結果伝達の制約に直面する場合がある。 |
DSDの検討と管理
~新生児における社会的性の判定~
最初に性別が不明確であることは,家族にとって不安で精神的重圧となる。精査と決定を迅速に行うことが求められる。社会的性判定に影響する因子には,診断,外陰部・生殖器の外観,手術の選択肢,生涯にわたる代償療法の必要性,妊手性の可能性,家族の意見,およびときに文化的慣行に関連する環境が含まれる。
乳児期に女性として養育された46,XX CAH患者の90%以上40と46,XY CAISのすべて4のが,女性としての自認を示す。エビデンスからは,CAHを有する著明な男性化を示す46,XX乳児を女性として養育するという現時点の勧告が裏付けられる。
.乳児期に女性として養育されたものの思春期に男性化をきたす(そして全員が男性性を割り当てられる)5α還元酵素(5αRD2)欠損患者の約60%は男性として生活している。
'.診断が乳児期に行われる5αRD2,およびおそらく17βヒドロキシステロイドデヒドロゲナ=ゼ(17βHSD3)欠損患者でも,大半の患者における男性としての性自認(male
genderidentity)生と殖の可能性(5αRD2では証明されているが17βHSD3では不明)について,社会的性決定のエビデンスを提供する際に論じる必要がある。 |
DSDの検討と管理 ~外科的管理~
手術の時期
外科的管理外科医は,乳児期から成人期まで,外科的な一連の流れとその後の成り行きの概要を明らかにする責任がある.。これらの手順は,小児ケアとDSDの手術に熟練したタト科医しか行つてはならない。
今日,陰核肥大が軽度の場合,親が手術を選択する傾向は低いように思われる4つ.手術は男性化が著しい場合にのみ考慮すべきで,可能であれば共通泌尿生殖洞修復と共に施行する。陰核手術によリオルガスム機能や勃起感覚が障害されることがあるため,手術の手順は解剖学に基づき勃起機能と陰核神経分布を維持する必要がある.厳密な外観の形成より機能的アウトカムが重視される.体系的なエビデンスはないが,一般に,生後一年以内に外形的な理由からなされる手術は親の悲嘆を軽減し,小児と親の愛着を高めると感じられている。
今日,腟と尿道の早期分離を却下するに足りる機能的解剖学の確立に関連するエビデンスは不十分である.早期再建の合理的根拠には,米国小児科学会(AAP)の性器手術時期に関するガイドライン早期乳児期の組織に対するエストログンの有益な作用,および卵管を介した尿路と腹膜の接着による合併症の可能性を回避することが挙げられる。
.乳児期の外科的再建は思春期に改良しなければならなくなると予想される.腟拡大は思春期前に行うべきでない.外科医は,尿生殖洞障害再建にかかわる数種の術法に習熟していなければならない。腟が欠損あるいは低形成である場合,患者の精神的な準備が整い処置に充分な協力が得られれば,思春期に腟形成術を施行する.普遍的に有効な単一の手技があるわけではない。自己拡張(self
dilatation)膚,皮あるいは腸を使用する腟形成は,それぞれ固有の長所と短所をする。
尿道下裂について
尿道下裂を伴うDSD症例5つでは,慎重なテストステロン補充と共に,尿道索矯正,尿道再建などの標準的な外科的修復技法が適用される。
初期カウンセリングでは,成人期における陰茎形成の必要量と複雑さについて, もし社会的性決定の成否がこの処置に依存するならば,考慮する必要がある。これは社会的性の決定に影響することがある。ヒト組織工学(再生医療)の利用を含むペニス再建について患者に非現実的な期待を与えてはならない。
卵形嚢またはミュラー管遺残などの無症候性で性に不一致な構造物は,将来症状が現れれば外科的切除の適応となり得るが,その予防的切除が必要であるというエビデンスはない。成人期において陰茎形成が成功した男性では,海面性人工器官を挿入しても良いが,問題点も少なくない。
性腺について
女性として養育されたCAISおよびPAIS患者の精巣は,成人期に悪性腫瘍をきたさないように摘出すべきである。エストログン補充療法が利用できれば,診断時の早期精巣切除が選択肢に入り,関連するヘルニアの発症。
精巣の存在による精神的問題,および悪性腫瘍リスクを軽減できる.親による選択の道は,CAISにおいて最も早期に報告された悪性腫瘍が14歳であるため,思春期まで据え置くことができる。
男性として養育されたMGD患者の索状性腺は,小児期早期に腹腔鏡下(または開腹術)で摘出すべきである鋤.性腺異形成とY染色体成分を有する女性(両側索状性腺)では,小児期早期に両側性腺切除を行う。女性として養育されたアンドログン生合成欠損患者では,思春期前に性腺を切除すべきである.性腺異形成患者の陰嚢内精巣は悪性腫瘍をきたすリスクがある。 |