大野小児科                                                      
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秋田県に肥満児がなぜ多い? 
              冬の運動不足の問題
早ね・早起き・朝ごはん・1日20000歩外遊びを
            秋田県「こども」研究会第20回 2007.7.28
シンポジューム「こどもの居場所と遊び」での講演から

 秋田県に肥満児がなぜ多いPDF版はこちらをクリックしてくださ
い。(一部加筆あり)


2 秋田県は肥満児頻度が日本最悪であるようです。昨年12月に文科省が初めて都道府県別の肥満児頻度を
明らかにしました。秋田県が肥満児日本一の県ではないかということを私はこれまで強く主張してきたのです
が、標準体重など全国統一基準によるデータがなく、はっきりはしませんでした。今回初めて標準体重計算基準
が示され、全国データが明らかにされたのであり、この意義は大きいと思います。ご承知のように秋田県は生活
習慣病最悪県ですが、生活習慣病の最大の危険因子である肥満が子どもにおいて日本最悪となれば、子供を
育てる生活習慣や環境が最悪であり、また将来までも生活習慣病ワーストが続くことが予想されます。これは見
過ごせない重大な問題です。

2 秋田県の肥満傾向は全国最高


3 文科省の発表です。黄色で表した部分が全国での順位3位以内、緑が10位以内ですが肥満児出現率の高さ
が目立ちます。また男児に目立っています。
3 肥満傾向頻度男児


女児はやや良いもののやはり全国の上位です。
4 肥満傾向頻度女児


5  これは私たちが平成1-3年度の文部省学校保健統計調査データから作成した標準体重をもとに全県学童を
対象に調査したものですが、全国より秋田県は相当に高くなっています。(全国値は学校保健統計調査値によ
る)
5 秋田県肥満児頻度男児


 6 秋田市と秋田市以外との肥満児の頻度では、郡部が高い頻度です。
6 秋田市と秋田市以外の肥満児頻度男児


7 では秋田は昔から肥満児が多かったのでしょうか。



8 戦後の身長発育です。右側が一部拡大図です。青が全国、赤が秋田で、秋田の子どもも昭和30年代は平均
よりも小さく体重も少なかったのですが、昭和40年代を境に全国平均を上回り、差も広がってきました.
   
8 戦後身長発育の推移(右は拡大図)


9 戦後日本人の身長体重は増えています。しかし身長は平成に入ってからほぼ頭打ちになっていますが、体
重はまだ増えつづけています。つまり平成に入ってから肥満傾向になってきているのではないかと思われます。
                                   
9 戦後身長体重の伸び


10 実は同年齢児の中で最も多い身長(最頻値)はそんなに変わってはいません。たとえば昭和55年の平均身
長にたいする体重をみてみますとはこの25年間でほとんど1kg以下の増加にすぎません。一番増えた11歳で
も昭和55年(1980)の平均身長は144cmで体重は36.6kgですが、平成16年の身長144cmの体重は38kg、1.4
kg増にすぎません。                    
10 最頻値身長に対する体重の推移


11 これは今回私たちが歩数調査をしたグループの度数分布で平均身長は144.4cm、体重40.2kgですが、最頻
値が真ん中ではなく、高身長、高体重側のすそ野が伸びています。これが平均値を押し上げることになりま
す。肥満児は一般に身長もおおきいので、全体の平均身長・平均体重の増加は肥満児が増えてきたためと思
われます。                     
11 現在の身長体重の度数分布


12 なお平均身長体重の上位3位までと下位3位までをみると、上位は青森、秋田、山形など東北や日本海沿
、下位は沖縄、九州、和歌山、広島など九州や西日本の太平洋沿岸であることが分かります。地理的・気候
的問題があることがうかがわれます。
12 平均身長体重の上位3位、下位3位


14  さて肥満への対処は運動と食事ですが、私は他県より秋田県に肥満児が多い大きな原因は運動ではない
かと考えていますので、運動について検討してみました。ここでは病気に関連する肥満は考えません。



16 以前から運動や体力は死亡率と大きな関係があることが知られており、体力のある人や運動量の適当な人
は死亡率が低くなります。
  適当な運動量は成人で1週間3000−3500カロリー、1日450-500カロリーといわれます。
16 成人に適当な運動量


17 これが大人「1日1万歩」の根拠になるのですが、体重60kgの成人の1万歩はおおよそ315カロリーの消費に
なります。1週間で2200カロリーですからできればもう少し多く12000歩位ほしいところです。
17 成人一日1万歩の運動量


18 では子どもではどのくらいでしょうか。



19 秋田県医師会で私たちが平成15-16年の春から夏にかけて県内小学校5-6年生男児に朝から晩まで1週間
歩数計をつけてもらい、1日平均歩数を調査したところでは平均で1日約15800歩でした。図の横軸は歩数、縦
軸はBMIで、真ん中の縦線は平均歩数ですが、BMIが高い児すなわち肥満児でも春夏では歩数量はそんな
に少ないわけではありません
19 BMIと歩数1


20 しかしこの赤の線は22000歩を示しているのですが、22000歩以上の歩数を示す子どもにBMIが高い子
つまり肥満児は見られません。これは統計的に有意差があります。
 この22000歩のエネルギー消費量ですが。
20 BMIと歩数2


21 2005年に厚労省が出した生活強度別エネルギー所要量は小学校5-6年生の男児で一日1950〜2250カロリ
ーです。                                     
21 生活活動別エネルギー消費量2005


22 運動エネルギーはこの生活強度別エネルギーの20〜30%といわれますので、一日390〜450カロリーとな
ります。
22 運動エネルー


23 運動強度の問題がありますが、歩行運動では時速4km体重40kgの小学5-6年生では大体1時間約126カ
ロリーとなります。                                  
23 小5-6年生の歩行時消費エネルギー


24 万歩では3時間かかり約380カロリー、22000歩ですと3時間20分かかり約420カロリーとなり、エネルギー
所要量でいわれる390〜450カロリーにほぼ適当です。しかし平均の15800歩では300カロリーであり、やや不足
です
24 小5-6年22000歩の消費エネルギー


26 歩行は軽い運動ですが、スポーツなどの時には野球40-80分、サッカー20-40分で160カロリーと言われ
ます。この2〜3倍の時間運動すれば400〜450カロリーとなり、これはまた22000歩の歩行に相当します。
  400〜450カロリーという運動量はおおよそスポ小の練習量位に相当すると思われます。実際にも肥満児がス
ポ小に参加するようになると相撲柔道以外はほとんど肥満度が軽減するのを経験することから(相撲や柔道で
は指導者が意識的に体重増加をさせることが多い)、肥満予防に、さらには肥満児の治療に一日20000〜
22000歩相当の運動量をこなせるように、一日のうちに2時間前後の運動時間を用意するといいと思いま
すし、小学5-6年生の運動量としてこの量を推奨することは過度ではないと思います。
 そして成人の「1日1万歩」を参考に「子どもは1日2万歩」という標語を掲げることを提案します。 
26 まとめ1


27 別に秋田市の小学生について私は平成17年春と秋の身長体重の比較調査を行いました。全体にこの間に
身長はおおよそ年間の伸びの半分伸びていたのですが、体重は年間増加量の1/3しか増えていませんでし
た。


28 肥満度を計算してみますと春よりも秋に肥満度が減少した者が増加した者より圧倒的に多くなっていま
す。                                              
28 春と秋の肥満度の増減


29 これをBMIでみると、小中学生のBMIは成長とともに数値が増えるので通常10-11歳では年間0.6位、すなわ
ち秋のBMIは春よりも平均約0.3くらい多くなるはずですが、29図の青は春よりも秋にBMIが増加したもの、赤は
春と比べて秋にBMIが増えていないかむしろ減少したものですが、赤つまりBMIが増えないあるいは減少した
ものが多数です(黄色の部分は±0.3すなわち増あるいは減であるが変化が少ない部分)。つまりスリムになっ
ています。
29 春と秋のBMI の変化


30 平均BMIでみますと春から秋までの約半年の平均BMIはほとんど増えません。
 30 春から秋までは平均BMIはほとんど増加しない。


31 各肥満程度の頻度をみても秋には頻度が少なくなっており、正常化したものも231人中 46人(20%)見ら
れます。                                              
31 春の肥満児が秋にどう変わったか。


32 肥満児の出入りすなわち春は肥満度20%以上であったが秋には20%以下になったものと逆に春には20%
以下であったが秋には20%以上になったものを比較しても減少した者が多く見られます。天高く馬肥ゆる秋で
すが、秋田の子どもはやせていきます。                                              
  
32 肥満児の出入り


33 要するに秋田の子どもは秋には春よりもスリムになります。これは恐らく春から秋までは運動量が多
く、秋から春まで即ち冬は運動が不足するためではないかと思います。地理的気象的意味、つまり寒さが
厳しく、雪の降ることが影響しているのではないかと思われるのです。
33 まとめ2


34 蛇足ですが、運動は子どもにとっても非常に大きい意味を持っています。長寿や生活習慣病予防だけではな
く、たくましい体つくり、健全な生活習慣つくり                  
34 子どもと運動1


35 集中力、勉強の効率化、社会性を育てるなどにも非常に重要です。
35 子どもと運動2


36 まとめ
 夏と冬で食事の状態が大きく変わるわけではないと思いますので、秋田県に特に肥満児が多いのは子
供の健全発育に欠かせない運動の場所や機会が少ないことを意味し、寒さや雪など冬という自然的なハ
ンデイを克服できていないことを意味します。これは大人の責任です。食事の問題を決して軽視するわけ
ではないのですが、肥満予防は子供の遊び場、運動の場など居場所つくりでもあるのです。運動はたくま
しい丈夫な子どもを作ります。生活習慣病最悪県という評価は残念ながら子供の健全育成最悪県という
評価にもつながるものであることを私たちは考えなければならないと思います。

36 まとめ3



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